2月27日(日)に、読書会「ともに読む」を行いました。
今回ともに読んだ作品は、エーリッヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』です。
茨城大学人文社会学部教授の西野さんのナビゲートのもと、大学生から社会人まで8名が本を片手に集まり、印象に残った場面や感想などをオンラインで語り合いました。
同じ本を読んでも、その人のいる環境や立場によって響く箇所が違うのが、みんなで読む面白さですね。
大学生のみなさんは登場人物の生徒たちに自分を投影しながら、教員という立場で参加したみなさんは物語に出てくる教師の言葉に心揺さぶられながら、今までの経験やこれからの生き方にも想いをはせつつ話をしました。
今回のハイライト、話題になったのはこんなところでしょうか。
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「この世の中では、なにを悲しむかということはすこしも問題ではなく、どれほど深く悲しむか、ということだけが問題なのです。」
「ただひとつ、自分をごまかしてはいけません。また、ごまかされてもいけません。不幸にあったら、それをまともに見つめることを学んでください。うまくいかないことがあっても、あわてないことです。不幸にあっても、くじけないことです。」
「かしこさをともなわない勇気は乱暴であり、勇気をともなわないかしこさなどはくそにもなりません!」
「なぜ君たちは、私に尋ねなかったのだ?きみたちは、それほど私を信頼していないのか。とすると、わたし自身も、罰をうけなければなるまいな。」
「少年時代、心から信頼できる先生がいなかったばかりに苦しんだ。自分の学校の舎監になろうと、そのとき決心したのだ。少年たちが、自分の心のなやみを、なんでも言えるような人になってやろうとね。」
「教師たるものはな、つねに成長、変化する能力を持ち続ける義務と責任があるんだ。・・(略)・・われわれが必要とするのは、生徒を成長させようと思ったら、自分も成長せずにはいない先生なんだ。」
「すべてわるいことをした場合には、それをやった者ばかりではなく、それをとめなかった者にも責任がある。」
「なにが本当に大切な問題か、それを思い出すゆとりのある人間が、もっといてほしいと思うんだ。」
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気になる言葉があったなら、ぜひ本を手に取ってみてください。
言葉だけでなく、読み進めながら胸がいっぱいになる素晴らしいシーンもたくさんありました。
それぞれの場面の背景にどのような物語が隠れているのか、登場人物の言葉や動きにどんな思いが込められているのか・・・そんなことを丁寧にみんなで読み解いていく作業が、とても心地よかったです。
正解がないとしても、そうして想像すること、思いをはせることが、私たちの心を耕し深めてくれるのかもしれません。
『飛ぶ教室』が書かれた当時、ドイツはナチスの支配下にあり、ケストナーは児童文学のみを書くことが許されていたそうです。
当時の社会背景から、この物語にどのような願いや希望が託されていたのか、そんなことも考えました。
時を超え、それを探して受け止めようとできたなら、私たちはもっと多くを学んで賢くなれるのかもしれない、そんなことも思いました。
気になる言葉を拾い集めるだけでなく、深く味わい、言葉の周辺にある景色や思いを想像しながらみんなで対話をする、そんな特別な時間でした。
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