ともに読む#4「舞姫」「高瀬舟」

 9月3日(日)、本、特に、学校や教育に関係ある文学作品を読んで自由に意見交換をする「ともに読む」の第4回が、水戸「まちカル&まちゼミ」として、水戸市泉町の「マチノイズミ」で開かれました。今回の作品は、森鴎外の「舞姫」と「高瀬舟」でした。

 「舞姫」は、その独特な文体にみなさん苦戦しながら読まれた様子でした。「音声を探して、聴きながら文章を目で追いました」「ネットで現代語訳を探して、内容の答え合わせをしました」「読むのがきつくて、全部読んでないんです・・・」など様々な声が聞かれましたが、書かれた時代背景を聞いて、当時の社会の様子や人々の価値観、文化などを思いながらみんなで手探りしていくと、だんだんと作品に愛着がわいてくるから不思議です。読者がどのような視点でこの物語をとらえるかは、時代によっても違ってくるという話も聞きました。近代的自我が描かれるその中に、国家に捧げる人生か自由な人生か、次の時代をどのように作っていくのか・・・様々な問いが隠れているようです。

 「高瀬舟」は、いつ読んでも深く考えさせられる作品です。「足りる」という感覚について、「幸せ」というものについて、喜助と庄兵衛のやり取りを読みながら思うことがいろいろとありました。

 作者の森鴎外についても、大変興味深く話を聞きました。軍医として、社会や他者からの要請に従って生きる姿と、小説を書くことで、要請に従って生きる自分や当時の社会そのものを冷静に見る視点。鴎外がどのような人物だったのか、もっと彼の作品を読んでみたいと思いました。

 年齢も立場も異なる人たちが同じ本を手に集まり、作品の全体的なイメージを比較したり共有したり、一つ一つの言葉についてじっくり考えて語り合ったり、とても豊かな時間でした。目まぐるしく情報が飛び交う時代、すぐに答えを求めがちな昨今では特に、各々の感性を持ち寄って想像を巡らせ、答えのない物事についてたっぷり話をするという体験は、とても貴重ですね。感受性豊かな中高生たちとも、こういう時間を共有したいなあと思いました。

 ご参加くださったみなさま、今回もよい時間をありがとうございました。

特定非営利活動法人トモニトウ

身近な友に問いかけるような気軽さで、よりよい社会や未来の在り方を共に問い合いたいーそんな思いで、さまざまな立場の方々と教育や地域について考え行動する機会をつくります。

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