コウゾを育てて紙をすこう!~紙は何からできている?

 4月27日(木)、常陸大宮市立山方小学校の「総合的な学習の時間」をお手伝いしてきました。今年度、年間を通じて「コウゾを育てて紙をすこう!」という企画を実施する予定で、今回はその第1回。4~6年生の児童たち49名による縦割り班での活動です。

 常陸大宮市山方地区と言えば、「西の内紙」は外せません。コウゾを原料として漉かれた和紙で、350年を超える歴史があります。江戸時代には水戸藩の専売品として愛用され、各方面で幅広く使われていました。保存性・耐久性に優れ、破れにくく水にも強いため江戸の商人の大福帳としても重宝されたそうです。水戸光圀が編纂した「大日本史」にもこの和紙が使われています。

 今回講師としてご協力をいただたのは、本西の内紙保存会の菊池三千春さんと、NPO法人美和の森の石井聖子さん。菊池さんからは紙にまつわるお話を聞かせていただき、コウゾの苗の植え方を教えていただきました。8班に分かれた児童たちは、それぞれ自分の班のコウゾ苗を受け取って、スコップを手に根の大きさや形を確かめながら穴の大きさと深さを調整します。苗を植えた後は観察をして絵を描き、様子を記録しました。

「どの部分が紙になるのかな?葉?茎?それとも根かな?」という児童の言葉に

「そうだねえ、どこが紙になるか楽しみだね」と答える先生の言葉が聞こえてきました。

ああ、なんて素敵な会話だろうと、隣で聞いて静かに感動してしまいました。将来の予測が不可能なVUCA(ブーカ)の時代と言われる昨今、近くにいる大人も一緒になって問いを見つけて楽しむ姿勢が、子どもたちの探究心を刺激するような気がします。「教えるプロ」から「学びのプロ」へと、教育者に必要な素養も変化するかもしれません。「正解」がない時代だとしたら、「正解」は探しても見つからないし、誰かが「正解」を持っていることを想定して忖度することも意味がありませんね。好奇心を持って世界を見つめること、身の周りの美しさに心を開いておくこと、思考する癖をつけ思考力を鍛えておくこと、そんな力が、子どもたちが未来を生きる礎になるような気がします。加えて言うなら、どんな自分であっても自分自身を信頼してよいという感覚、でしょうか。身近な大人たちが、子どもの感性を大事に、子どもが表現するものを喜び、認め、励ましながら日々を過ごすその積み重ねが、子どもの中に肯定感を育むのだと思います。学校の中だけでなく、地域にもそんな大人がたくさんいて、学校という場をハブにしてみんなで子どもの見守りができたら素敵だし、そういう意味でも学校にはたくさんの可能性があるなと思います。

 子どもたちが教室に戻った後に、植えられたコウゾ苗に水やりを。脇の方に、トロロアオイの種もまきました。トロロアオイの根からとれる粘液は、紙をすくのに大切な役割をしてくれます。夏の間は、伸びてくるコウゾの芽かきなど地味な作業が続きますが、成長を観察して想像を膨らませながら、冬に予定している収穫を楽しみにしてほしいなと思います。

 今回の企画のもう少し具体的な様子は、ライターの谷部文香さんに取材をしていただいています。年間を通しての活動が一区切りしたら、改めて報告したいと思います。

 年度末のお忙しい時期に今回の企画に賛同し準備を進めてくださり、4月のあわただしい中で何かと調整をして活動実施につないでくださった山方小学校の先生方、本当にありがとうございました。心から敬意と感謝を申し上げます。


※トモニトウでは、地域と学校をつなぐ活動を積極的に実施したいと考えています。学校からの「こんな活動したい」「こんな協力者を知りませんか」という問い合わせや、地域のみなさんの「こんなアイディア学校にどうだろう」というご意見など、問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

特定非営利活動法人トモニトウ

身近な友に問いかけるような気軽さで、よりよい社会や未来の在り方を共に問い合いたいーそんな思いで、さまざまな立場の方々と教育や地域について考え行動する機会をつくります。

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